天使の卵

村山由佳「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」~恋愛小説の出発点!

作家の村山由佳さんのデビュー作、「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」を紹介します。

ここまでひたむきに、誰かを愛したことがありますか?

恋って、こんなに苦しいものだったっけ…

そんなほろ苦い恋心を思い出させる、悲しい恋の物語を紹介します。

●「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」あらすじ
主人公の歩太は19歳の浪人生。

天使の卵

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好きな絵で美大に行くか、堅実な人生を歩むために生きるべきかを悩むうちに、大学試験に失敗してしまいました。

そして、その年の春に偶然巡り会った精神科医、春妃に衝撃的な恋をしてしまいます。

彼にはガールフレンドの夏姫がいたけれど、どうしてもこの気持ちは止められなくて…。

●さびしい人々が、愛をはぐくむ物語

人々

村山由佳さんのデビュー作である「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」ですが、確かにデビュー作という事もあり、稚拙で早急な展開だな、といった感じはします。

そういったレビューも多く見かけます。

しかし、この痛々しいほど純真は愛情を描いた物語は、その後の村山由佳さんには描くことが出来ない、ある意味では唯一無二の作品となりました。

多くの人にこの「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」が支持され、映画やコミックといった作品に昇華されたのは、この作品がかつて自分の中にあって、二度と戻ることがない感情が隠されていることを知っているからではないでしょうか。

「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」のラストは悲劇で終幕を迎えます。

私たちの心の中にも、主人公の歩太のように、ぽっかりと取り残された感情がどこかにあるからこそ、この物語は多くの人々の胸を打つのかもしれません。

●歩太が行き着く先は…

「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」は、春妃の死をもって終わりを迎えます。

歩太は、春妃と過ごした彼女の部屋を守りたい、と願いながらも、それは叶わない事だと自分でも分かっていました。

春妃との写真さえなかった彼の手に残ったのは、彼女を描いたクロッキーと、赤ん坊の小さな靴下。

おそらく歩太はそれだけを持って、春妃の部屋を出たと思われます。

私たち読者が感じる、空虚な感情はそのまま歩太のものであり、その空っぽな感情を抱えながらも、私たちと歩太は生きていかねばならないと痛感させられます。

人は、死んだ人には追いつけないものだから。

ちなみに「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」はその続編として「天使の梯子」「ヘヴンリー・ブルー」「天使の柩」が発表されおり、春妃に置いて行かれた人々の静かな再生が描かれています。

こちらも感動の作品となっていますので、気になった人はぜひ読んでみて下さい。

●静かな感動を与える物語

以上、村山由佳さんのデビュー作「天使の卵ーエンジェルス・エッグ」を紹介しました。

物語は淡々と、あるいは平坦に描かれていますが、その静かさがよりさびしさを際立たせるような印象の作品となっています。

せつない程純粋な恋愛小説を読みたい、という人にうってつけの作品となっていますので、ぜひ読んでみて下さいね。