青のフェルマータ

村山由佳「青のフェルマータ」~藍色の海をイルカとともに…

村山由佳さんの小説、「青のフェルマータ」を紹介します。

両親の不仲と自分の罪悪感で声を失った少女、里緒。

イルカとの触れあいが治療に効果的と聞き、チェロを抱えて彼女はオーストラリアの島へ。

研究所での暮らし、イルカとの交流、巡り会う人々との中で、里緒の心はゆっくりと解き放たれて…。

温かい愛が沁みる恋愛小説の紹介です。

●「青のフェルマータ」あらすじ

青のフェルマータ

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精神的なショックが原因で、ある日突然声を失った少女、里緒。日本から逃げるような形でオーストラリアのイルカ研究施設へ行きます。

出会った友人やチェロの師匠、JB、そして研究所のイルカ達と、野生のイルカ達を抱くあたたかな海。

チェロの低い旋律は、冷たく凍った里緒の心をゆっくりと溶かしていきます。

●ベタな展開では決してない!

「心の傷」「イルカ」「癒やし」と三つ並べばもう「ああ、お涙頂戴ものか」と、それだけで敬遠してしまうかもしれませんが、それだけにとどまらないのが村山由佳さんの魅力なのです。

まあ、そういった展開もなくはないのですが、イルカは重要な脇役でありながら、決して里緒を救いません。

何故なら「救われる」と感じるのは、その本人だけなのであり、イルカが「癒やしてあげよう」といった傲慢な考えをしている訳はないのですから。

村山由佳さんの小説はどれも、

「人を傷つけるのは、人間。でも人を救えるのも、人間」

といったスタンスでの物語を書き続けています。

実際に本作でも、里緒が声を出せるようになってきたきっかけは、里緒が大嫌いだと思っていた男の存在が大きなものになっています。

里緒が声を出せるようになった代わりのように、傷ついた人がたくさんいます。

けれど、里緒はきっともう逃げずに彼らの前に立てるだろう、といった希望に満ちた形で、物語は終わります。

読んでいる方はきっと、里緒に腹を立てながらも、自分の中に里緒のような弱い部分を見つけて、どうしても振り払えなくなる事でしょう。

●癒やされたい人々

この「青のフェルマータ」が出版された頃、「癒やし系」という言葉が使われるようになりました。

癒やし系の音楽に癒やしの香り、人…。

たくさんの人が生きることに疲れ、癒やしを求めていた時代です。

「青のフェルマータ」に登場する人物は皆、誰かに傷つき誰かに救われています。

読んでいると、これが正しい人間関係のあり方なのかなあ、といった思いを感じます。

彼らは特別な力を持っている訳ではないのに、ただそこにいるだけで救われている人がいる。それって、凄いことなのかもしれません。

人間関係が希薄になってしまった現代、私は誰に救われ、誰かを癒やしているのかな?といった事を、ふと感じる小説でもあります。

もちろんこれは私の解釈ですので、「青のフェルマータ」」を読んでどう感じるかはその人によって違うでしょう。

ありきたりの展開ではない物語ですので、小説をたくさん読んでいる人でも楽しめる小説ですし、村山由佳さんの小説はどれも読みやすい文章ですので、どんどん物語の中に入っていけるのではないでしょうか。

本

そういった意味では、この「青のフェルマータ」は、どんな人にでもスイスイ読める小説となっています。

●青い海への旅に癒される

以上、村山由佳さんの小説「青のフェルマータ」を紹介しました。

読んでいるときっと、オーストラリアの藍色の海が見えるでしょうし、里緒やJBが奏でるチェロの低い旋律が聞こえてくるような、それこそ「癒やされる」ような小説です。

読みやすい作品だと思いますので、ぜひ一度読んでみて下さいね。

野生の風

村山由佳「野生の風」~サバンナの熱い風に吹かれる恋愛小説

村山由佳さんの作品が大好きです。このサイトでは中でもおすすめの10作品について、私amiのレビューを掲載しています。ぜひ新しい村山由佳作品に出会っていただければと思います!

☆☆☆☆☆☆☆☆

第1回目の今日は、村山由佳さんの小説「野生の風」を紹介します。染織家である主人公・飛鳥と、野生動物の「いのち」を撮る写真家、一馬。運命的な出会いで愛し合い、お互いに離れられない程かけがえのない二人に、ある事実がつきつけられ…。

サバンナの熱い風に舞い上がる、二人の愛の行方は?

●「野生の風」あらすじ

野生の風

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染織りの世界に魅せられ、色の世界に飛び込んだ染織家、多岐川明日香。

野生動物の「いのち」を撮る写真家、藤代一馬。

自分の世界のためならある意味、傲慢とも言える態度を取る二人ですが、根っこはただ「この景色を表現したい」と感じる、とてもよく似た二人。

ベルリンの壁崩壊の夜に出会った二人は、紆余曲折を経てアフリカで再会を果たします。

熱い風に巻かれるように燃え上がる二人の愛は、このまま続くかと思われますが…。

●アフリカの風、風を抱く鳥

私はアフリカへ行ったことはありません。

ですが、村山由佳さんの「野生の風」を読むと、アフリカの熱風、土の匂い、自然の音が聞こえてくるような感覚におそわれます。

「野生の風」の解説を書いた伊集院静さんが、

「文章に香りがある」

と書いていますが、その言葉がよく分かるような気がします。

村山由佳さんの小説はどれも、文章に匂いと音があり、それが読んでいる方に「登場人物って、きっと生きているんだ」といったリアリティを感じさせてくれます。

飛鳥は自由気ままに生きていながらも、最後の最後では決して自分のわがままを通そうとはしませんでした。

その時の空気の冷たさ、猫のぬくもり、にあ、あ、とかすれた声で鳴く
猫の鳴き声。

読んでいる方は、まるで物陰から飛鳥を見ているような感覚に陥ってしまい、涙が止まらなくなってしまいます。

最近の村山由佳さんの小説では、こういった感じの恋愛小説を書く事がなくなってしまったのがとても残念です。

「野生の風」は1995年に発表された作品ですが、今読んでみても全く古くさい感じはしません。

「恋愛もの」といったジャンル自体が飽きられている感じもある昨今ですが、この本を読むと「こんな恋愛がしてみたい!」と思うのではないでしょうか。

決してハッピーエンドではないのですが、村山由佳さんの小説が初めて、という人にはぜひ読んでもらいたい小説だと思っています。

本

●ふたつの世界が楽しめる作品

以上、村山由佳さんの小説「野生の風」を紹介しました。

染織りの世界、写真の世界、どちらもなじみのないものですが、その世界にしか生きられない人の生き様と情熱的な恋愛。ふたつの世界が楽しめる作品になっています。

恋愛小説が読みたい、と思っている人や、初めて村山由佳さんの小説を手に取る人におすすめしたい作品です。ぜひ一度読んでみて下さいね。