すべての雲は銀の…

村山由佳「すべての雲は銀の…」~全ての人に幸せを…

都市圏に暮らす人の中には、田舎暮らしに夢を抱いている人もいるのではないでしょうか?

自然が豊かで、人との温かい交流もあって…、と魅力を感じているのかもしれませんね。

しかし、実際に暮らしてみると、それなりに不便や、ややこしく感じる事も多いのです…。

今回は村山由佳さんの小説「すべての雲は銀の…」を紹介します。

●村山由佳「すべての雲は銀の…」あらすじ

すべての雲は銀の…

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恋人の由美子の気持ちを、よりによって実の兄に奪われてしまった主人公・祐介。

友人のタカハシの紹介を頼りにたどり着いた先は、信州にある小さな宿、「かむなび」。

頑固者の園主、園主の身内である瞳子とその子供、健太。

花の仕事をする女の子たち。

由美子の影を忘れようと、必死に仕事に取り組む内に、祐介の周りにいる人たちも、辛い傷を抱えている事に気づいてきて…。

●赦しの物語、赦されたい人たち

最初にこの「すべての雲は銀の…」を読んだときは、祐介の気持ちが痛いほどに伝わってきて、「絶対に由美子と兄貴は許せない!」と憤っていたものです。

何度かこの本を読み返し、それなりに人生経験というものを積んだ後に読んでみると、なるほど祐介の幼い怒りや、最終的に何故祐介が由美子を赦そうと思ったのか、じんわりと伝わるような気がします。

シビアな言い方をすれば、過ぎ去った時間はもう戻りません。

どれだけ後悔や憎しみを募らせたとしても、幸せな時は二度と戻らず知らなかった頃にはもう戻れません。

そのまま憎しみを募らせながら一生を暮らすのもいいでしょう。

ですが、祐介はそれを良しとしませんでした。

こんな自分が嫌だ、中途半端な自分でいたくないと願い、ふと、由美子はそんな自分を赦してくれていたんだな、と気づき、次第に由美子を赦す気持ちが芽生えていきます。

「すべての雲は銀の…」は赦しの物語だと思います。

赦すというと、傲慢な響きに聞こえるかもしれませんが、人は誰かに赦され、また誰かを赦して生きているものなのでしょう。

これは祐介と由美子に限った話ではなく、園主や瞳子さんなども同じように誰かに傷つけられて、それでもひたむきに生きていこうと努力をしています。

物語のクライマックスで、祐介は多くの人を傷つけてしまい、中途半端な自分にケリを付けるため、一度東京へ帰るところで終わります。

おそらく、祐介と由美子の関係はそこでようやく終わりを迎え、祐介は再び歩き出すのでしょう。

それを読者が見ることはありませんが、祐介ならなんとか上手く、「かむなび」でやっていくのだろうな、という希望に満ちた物語です。

息もつかせない展開や、大どんでん返しといった小説ではありません。

ですが、こののんびりとした展開の中にも、たくさんのドラマと感動があって、ファンタジーやサスペンス小説とはまた違った魅力を感じるのです。

●心が少し疲れた人へおすすめしたい作品

村山由佳さんの小説「すべての雲は銀の…」を紹介しました。毎日の仕事でくたびれている人や読んだ後にほっとした気持ちになりたいような人におすすめしたい作品です。

疲れた猫

ぜひ一度読んでみて下さい!