5_umiwodaku

村山由佳「海を抱く―BAD KIDS」~人の中の影の部分をさらけ出す

村山由佳さんの小説「海を抱く―BAD KIDS」を紹介します。

この小説の前作となる「BAD KIDS」のアナザーストーリーのような小説で、前作以上にドロドロとした展開が目を離せなくなるような小説です。

●「海を抱く―BAD KIDS」あらすじ

海を抱く

https://www.amazon.co.jp/

 

サーフィンに情熱をそそぐ高校生、光秀は「誰とでも寝る軽いヤツ」という風評を持つ男。

一方、成績優秀で教師からの信頼も厚い優等生、恵理。

全く接点のなさそうな二人がある出来事をきっかけに、性的な関係を持つようになってしまいます。

「取り引き」という名目で抱き合う二人ですが、徐々に関係に変化が訪れ…。

●傷つけ合う二人の関係

手繋ぎ

前作「BAD KIDS」でも、性的な表現があって少々ドキドキした経験があるのですが、「海を抱く―BAD KIDS」はそれ以上と言ってもいいほどの濡れ場で、「村山由佳さん凄い…」と思った記憶があります。

二人の曖昧な関係を軸に、光秀の父親が末期の癌に冒され余命幾ばくもないこと、恵理の兄が引き起こした事件などを経て、二人の関係は少しずつ変化を見せます。

秘密を共有した二人は、たとえそれが後ろ暗いものだとしても、お互いを強く引きつける力があるのでしょう。

それは多分、世間が「絆」と呼ばれるものに、とても近いものなのかもしれません。

二人は、大人達が眉をひそめるような事をしていることを充分に理解しています。

それでも、寂しい心の隙間を埋めるように、お互いを求め合います。

村山由佳さんの小説は、どれも普通の恋愛を書く事が少ないように思えます。

それでも、根っこの部分はとても純粋で単純なもの、お互いを想う気持ちのようなものがあるからこそ、たくさんの人の共感を得るのでしょう。

●文章に漂う「香り」と「音」

村山由佳さんの小説の書評を書いた人が、

「彼女の小説には香りがある」

と書いていました。

確かに村山由佳さんの小説には、匂いや音を感じる事が多くあります。

「海を抱く―BAD KIDS」でも、酸っぱい夏みかんの香り、海の匂いや潮騒の音、自転車を押して歩く時のチキチキとした音…たくさんの音や香りをすぐ側で感じる事ができます。

「リアリティがない」

といった意見も見られますが、これほどリアルに舞台を、人を描いている作品はあまり見当たらないのではないでしょうか。

村山由佳さんは別の本で、

「私のからだを通り抜けてできた言葉」

といった書き方をしていましたので、彼女の小説は全てではないでしょうが、自身が経験したことが多いのかもしれません。

その経験が、文章に漂う音や匂い、人の感情に表れているのかもしれませんね。

●ぜひ前作「BAD KIDS」から!

以上、村山由佳さんの小説「海を抱く―BAD KIDS」を紹介しました。

もちろん前作「BAD KIDS」を読んでいなくとも楽しめる小説ですが、読んだ人には、所々で前作の主人公、都と隆之が登場することでニヤッとする事でしょう。

少々重い展開ですので、じっくりと読む時間があるときに開いて、自分の中にある恵理に似た部分や光秀に似た部分などを発見してみると面白いかもしれません。

とてもいい作品ですので、ぜひ一度読んでみて下さい。