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村山由佳「W/F ダブル・ファンタジー」~「黒」ムラヤマ誕生!?

今まで「天使の卵—エンジェルス・エッグ」や「すべての雲は銀の…」といった、爽やか青春小説家、として人気だった村山由佳さんですが、今回紹介する「W/F ダブル・ファンタジー」で大化けしたような印象と衝撃を受けました。

そんな「黒」ムラヤマ全開の「W/F ダブル・ファンタジー」を紹介します。

●「W/F ダブル・ファンタジー」あらすじ

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脚本家としての仕事で成功をおさめた主人公・奈津。

しかし家では夫の省吾に気を遣い、居心地の悪い生活を続けていました。

そんな息苦しい毎日の僅かな救いになっていたのが、尊敬する演出家・志澤とのメールのやり取り。

徐々に思いを募らせる奈津はとうとう志澤に誘われて、家を飛び出しますが…。

●性表現の突飛さが話題に…

「W/F ダブル・ファンタジー」は中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞のトリプル受賞として話題になった小説ですが、肝心の中身ではなく性的に奔放な主人公、奈津ばかりが悪目立ちしてしまった作品でもあります。

今までの村山由佳さんの小説作品とは大きく内容が違い、何度も表紙を見て「これ、村山由佳さんの小説だよね」と確認した覚えがあります。

主人公、奈津は呆れるほど多くの男性と性的関係を持ちます。

その中でも特に、大学時代の同級生、岩井との関係には胸が締め付けられるものを感じます。

妻子ある岩井との恋愛はいずれ終わりを迎えると双方が気づいているのに、気づかない振りをして今この瞬間の行為に没頭する二人。

何だか痛々しくさえ感じてしまうのは、岩井の、

「なっちゃん」

という呼び方のせいでしょうか。

そうして夫の元から解き放たれ、多くの男性と関わりを持った奈津が得たものは、

「ああ。なんてさびしい。どこまでも自由であるとは、こんなにもさびしいことだったのか…。」(本文より)

読んでいる方もさびしくなるような結論ですが、奈津はそれでも、浴衣をからげて自分ひとり落とした下駄を探しにゆきます。

この最後の一文が奈津の、そして私たちの生きる姿と重なるようで、苦しくも切なくなってしまいます。

●共感と嫌悪感が引き立つ小説

この小説は本当に賛否両論激しい小説ですので、もしかしたら読むと不快感があるかもしれません。

小説の世界

「馬鹿な女だな」と奈津に対して思うかもしれませんが、私としては「自由を得るための戦いと、それに対する犠牲の多さ」といったものを描いた小説だと思うので、多くの人に読んで欲しい作品のひとつだと思い、紹介しました。

共感を得るか、しょうもない女だ、と呆れるかはその人次第。

ぜひ一度読んでみることをおすすめします。

以上、村山由佳さんの小説「W/F ダブル・ファンタジー」の紹介でした。